「モカ系」が好き。そのモカ系うまく説明できますか?
コーヒー豆を買いに来てくださるお客さんの好みを伺いながらコーヒー豆を提案するんですが、その中でもしっかりヒアリングしなければと使命のようなものを感じるお客さんに出会います。
「モカ系が好きなんです」
モカ、キリマンジャロ、ブラジルサントスなどなど、よく見かける商品名です。
この「〇〇系」というオーダーは、特にしっかりお話を聞こうと心がけます。
わりと名の知れたコーヒー豆(銘柄)なのにしっかりヒアリングしなければと感じるのか?
そのモカはどんな味でしたか?
理由はとてもシンプル。
「同じ銘柄のコーヒー豆を使っていても提案している味わいが違う」からなんです。
「さっぱりしてましたか?それとも苦味のきいた感じですか?」と聞くと
返ってくる答えはみなさん違います。
そうなんです。
同じ商品名(銘柄)でもコーヒー豆の味わいが違うのでしっかりヒアリングしないとわからないんです。
生産地で味が決まってしまうわけではない
例えばよく見かけるコーヒー豆の商品説明に以下のものがあります。
「コロンビア産のコーヒー豆=酸味が強い」
「ブラジル産のコーヒー豆=酸味が弱い(控えめ)」
この2つは、それぞれのコーヒー豆の商品説明の定番と言っても過言ではないと思います。
たしかにこの商品説明は間違ってはいないと思います。
だからといって僕がお客さんに
「酸味が強いコーヒーはコロンビア産ですか?酸味が弱いコーヒーはブラジル産ですか?」
と聞かれたら、そんなことありませんと答えます。
全てのコロンビア産のコーヒー豆が酸味が強いわけではありませんし、ブラジル産もまたしかりです。
「ブラジルで生産されたコーヒーは、酸味が弱い(控えめ)味わいのコーヒーが比較的多いでしょう」
この程度の認識でいるのが正解だと思います。
情報の古いサイトには、「ハワイコナは〇〇な味」「キリマンジャロは△△な風味」など書かれていて、産地で風味や味わいを決定づける情報が掲載されています。
その手の情報は、コピーペーストされた、どこかから持ってきたようなものばかりで、正直一昔前の古い情報で、全く当てになりません。
先入観を植えつける商品説明がほとんどである
喫茶店ブームがやってきた1950年代。コーヒーの消費が一気に拡大した時代があったそうです。
一気にコーヒーが広まるさなか、横に習えと言った感じにダァーッと「銘柄+味わいの系統」をセットにした商品説明が定番化していったのではないでしょうか。あくまで推測ですが。
この「銘柄+味わいの系統」は誰かが決めた参考程度のものだと考えてください。
とらわれすぎるとコーヒーの味がよくわからなくなってしまうと思います。
仕入れたコーヒー豆をどんな味わいに焙煎してお客さんに飲んでもらいたいか?
そこを軸にあれこれと思いを巡らすのが、自家焙煎コーヒー店をやっている僕のような人間です。
僕は、そもそも銘柄で味わいの系統はあってないようなものという考えです。
モカだから美味しいだろうとか、キリマンジャロはやっぱり外せないといったコーヒー選びはしていません。
買い付けする値段が高いコーヒー豆だから美味しいわけではないし、有名な銘柄だからおいしいというわけでもないんです。
銘柄名を付けたブレンドは不親切?
コーヒーの銘柄名をブレンド名にした販売方法がいまだに主流というのは、お客さんはわかりにくし、不親切じゃないかなと感じています。
「モカブレンド」···モカをメインにしたブレンドです。 「キリマンジャロブレンド」···キリマンジャロを贅沢にブレンドしました。
これでは、どんな味に仕上げてあるか想像がつきませんね。
銘柄で選んでしまうお客さん向けの商品でしかない気がします。
“キリマンジャロを贅沢に”とか、どこか刷り込まれたイメージであって違和感をおぼえませんか?
よくわからず、聞いたことのある銘柄を、消去法で選んでいたときのことを思い出します。
コーヒーの銘柄名は港の名前や山の名前が付いていることがある
そもそも聞き覚えのあるコーヒー豆の商品名は、パターンがあります。
コーヒー豆が生産された国の山の名前(キリマンジャロ)。
そして港の名前(モカ港、ブラジルサントス港)だったりします。ご存知の方も多いですよね。
昔は、現在のように物流システムやインターネットが普及して、生産者の取り組みが細かくわかる時代とは違ったはずです。
少ない情報の中で、現地の人達がつけたであろう山の名前がそのまま商品名になったのではないでしょうか。
(名前の由来は諸説ありますが)当然といえば当然かもしれませんね。
あなたの好みを伝えるだけで選ぶコーヒーの幅が広がる
それはどんな味わいのコーヒーなのか?というプロセスでコーヒー豆を選ぶようにしてみませんか?
すると、どの銘柄でなければダメという先入観や、「〇〇系」が好きという枠から飛び出すことができると思います。
そういう意味では、「モカ系が好きならこのあたりの銘柄も好きでしょう」
こんな感じの商品説明をするお店を利用しているのであれば、あなた自身の味覚の幅を広げるために、お店を変えてみるのも選択肢のひとつですね。
ぜひいろんなコーヒーを楽しんで、あなた好みのコーヒーを見つけるお手伝いができたらと思っています。
参考記事 – 実践編!自分好みのコーヒーを買うために大切な3つのこと。