数字で見るとよく分かるスペシャルティコーヒー
コーヒーを取り巻く環境はこの30年で目まぐるしく変化しています。
1982年にアメリカでスペシャルティコーヒー協会が誕生し、スペシャルティコーヒーとはなんなのか。
なにをもってスペシャルとするのかの定義が決められました。
スペシャルティコーヒーの理念や社会的な意義などに関しては、スペシャルティコーヒーのあまり語られない大切な側面の記事も読んでもらえるとうれしいです。
今回も個人的な意見を中心に、いろんな数字と一緒にスペシャルティコーヒーについてかみ砕いてお話していきたいと思います。
シンプルに言えば、飲んでおいしいコーヒー
理念は素晴らしい。だけどおいしくない。
これでは誰も買って飲んでみようと思わないでしょう。
飲んでおいしい。何よりも大切なことですね。
そしてさらにわかりやすい基準があります。
80点が基準。スコアシートで基準を満たしたコーヒー豆がスペシャルティコーヒー
(cupping)
丁寧に栽培されたコーヒー豆を、客観的に審査するためのスコアシートを使って、香り、甘みなど複数の項目を評価していきます。
スペシャルティコーヒー協会に認定された国際審査員が複数の項目で評価された点数の合計が80点以上だったものがスペシャルティコーヒーとして扱われることになります。
ここでも偏りがないように複数人でチェックがされています。
高品質なコーヒーは、スコアシートでも高評価がされ、それにより買付価格のアップが保証されていきます。
生産地の情報が100%明確にわかるコーヒー豆である
スペシャルティコーヒーの定義の中に、トレーサビリティー(traceability)というものがあります。
生産から精製、流通までの流れに透明性がある。どの国の、どの場所で、誰が生産したコーヒー豆で収穫量はどのくらいだったかなどいろいろなことがわかる。
透明性が高く品質にも自信があるというコーヒー農家さんほど、農園の情報をインターネットを上手に使い、以下のようなことまで細かく開示しています。
- 栽培しているコーヒー豆の品種の一覧
- フルタイムで働いている労働者の人数
- 農園を管理しているマネージャーの名前
スペシャルティコーヒーであるためには、こうした情報がはっきりしていることが必須だと定義されています。
以前、スペシャルティコーヒー専門店というお店で「モカ」「キリマンジャロ」という商品名でコーヒーが販売されていたのを見かけたことがありますが、これはスペシャルティコーヒーのことをあまり理解していない状態で販売しているのかもしれません。
また輸出量と輸入量に差異が出ている「ブルーマウンテン」は、スペシャルティコーヒーとしては扱えないコーヒー豆と言えると思います。
本来は、ブルーマウンテンエリアと決められた場所で生産されたコーヒー豆だけが名乗ることができるようですが、前述したように差異が出ているようでは透明性が足りないということですね。
※生産者情報のはっきりしたブルーマウンテンももちろんあります。
参考記事ーなぜブルーマウンテンは、コーヒーの王様のような扱いなのか?
スペシャルティコーヒーとは何か?というポイントを何点か挙げました。
まとめると
- 「飲んでおいしい」
- 「80点以上のスコアのコーヒー豆である」
- 「生産者情報のはっきりしたコーヒーである」
ということがスペシャルティコーヒーであると言えます。
さてここまでが、スペシャルティコーヒーの理念·ルール·建前の部分です。
本音·個人的な意見はこれからです。
スペシャルティコーヒーの品質の良さを引き出せているのか?
コーヒー農家さんが、「今年のコーヒーは本当によく育ったぞ!きっと良い評価をしてもらえるはず!!」
頑張って育てた甲斐もあって
、スコアシートでも100点が付いたコーヒーでした。
(たとえ話としてお願いします)
その100点のコーヒー豆を仕入れたコーヒー店が、焙煎をしました。
そしてそのコーヒー豆のポテンシャルを、40%引き出すことに成功してお客さんに買って頂きました。
お客さんも丁寧にコーヒーを入れて、おいしさを100%引き出すことができたとします。
ここでお客さんが口にするコーヒーは何点でしょうか??
答え .コーヒー豆のおいしさをしっかり引き出せても“40点分のおいしさ”しか感じられません。
こういうことが普通に起こります。
これに気がついた時は、軽い衝撃がありました。
スコアシートで100点の評価だったコーヒー豆(生豆)を仕入れたからといって、コーヒー豆屋が、それをそのまま100点の状態でお客さんに提供できるかは別の話です。
最高級の食材を使ったからといって、すべての料理が最高においしく仕上がるわけではありませんよね。
ポテンシャルを引き出せていないコーヒーを飲んであなたはどう思うでしょうか?
「それほどおいしくないなぁ」
「これだったらもっと安いコーヒーでいいなぁ」
きっと僕ならそう感じると思います。
スペシャルティコーヒー=おいしい。あなたはそう感じますか?
スペシャルティコーヒーを否定しているわけではありません。
「良いものを作れば売れる」
これは作り手のおごりでしかないとエステーの鈴木喬会長が述べています。
品質を売りにすれば物が売れる時代は終わったと思います。
特に嗜好品と呼ばれるコーヒーが、わかりやすく「飲んでおいしい」味わいに仕上げることができていなければ、わざわざ値段の高いコーヒー豆を買わないでしょう。
理念や社会的な意義に共感できたとしても、です。
スペシャルティーコーヒーは、丁寧に作られて80点以上のスコアを出した、選ばれたコーヒー豆です。
やはり希少価値もあります。</P p> こう言われると美味しそうですよね。そこを冷静になって「おいしく焙煎できてるかな?」とあなた自身の味覚でしっかり判断してください。
わかりやすく「飲んでおいしい」ということは、違う種類のコーヒーを飲めば、その違いがはっきりわかるということでもあると思います。
「コーヒー通じゃないから違いがあんまりわからない」
こう言って謙遜されるお客さんがとても多いですが、絶対にわかります。
違いをお客さんにはっきり感じさせられてこそ自家焙煎店です。
良い品質のコーヒー豆を使用しています。丁寧に焙煎しています。
それはまったくおいしさとは関係がないと、時々思い出して自身に言い聞かせています。
少し暑苦しい感じになってしまいましたが、高品質のコーヒー豆を台無しにしてしまう可能性があることを忘れてはいけないと思います。
それはコーヒー農家さんとお客さんにとって、マイナスでしかありませんから。
いかがでしたか?
本音と建前をバシッと言葉にしてみました。
「品質が良い」ということと、「おいしい」は冷静に考えると全く別物。
スペシャルティコーヒーだからおいしいコーヒーというわけでもありません。
スペシャルティコーヒーの中身の部分が少しでも伝われば、とてもうれしいです。
そのコーヒーを提供する僕のような自家焙煎店が、お客さんにしっかり伝えるべきことを伝える。
そして理解してもらった上で、スペシャルティコーヒーを提供しなければいけないと考えています。
スペシャルティコーヒーの“おいしさ”をどのように提案しているのかもぜひ合わせてお読みください。
関連記事 – スペシャルティコーヒーのおいしいは誰を基準に作られている?
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